エメラルドについては、実に様々な逸話・歴史が伝えられています。緑色の宝石がすべてエメラルドと信じられていた古代~中世時代の、逸話の信用性には疑問もあります。16世紀、南米コロンビアを征服し、エメラルド鉱山を略奪したスペイン人でさえ、その誤りを犯した形跡があります。
―――つまり、大量のエメラルド発見で価格下落を恐れたスペイン商人たちは、コロンビア産エメラルドを意図的に「西洋エメラルド」或は「スパニッシュ・エメラルド」と名づけ、それまでのアジア・アフリカ系のエメラルドを「東洋エメラルド」と差別化することで、コロンビア・エメラルドを相場下落から救おうとしたのですが、その「東洋エメラルド」と称する石たちの一部は、実は、グリーン・サファイヤだったり、グリーン・ジルコンだったそうです。
それでもコロンビア産の新産エメラルドがあまりに大量だったため、西洋エメラルドの相場は東洋の半値にとどまり、そのためスペインの宝石商はコロンビア産をわざわざフィリピン(当時のスペイン領)に移送し、そこから東洋エメラルドとしてヨーロッパに持ち込んだ、というオチまでついています。
「世界の天然無処理宝石図鑑」より参考
鉱物名べリル
産 地コロンビア、ザンビア、ブラジルなど
硬 度7.5~8.0
5月の誕生石・もっとも古くから伝わる宝石